女性にだけ発症する特有のがんである「乳がん」と「子宮がん」。
病気が悪化すると、乳房や子宮を手術によって取り除かなければならないこともあり、さらに最悪の場合は死に至ることもある怖い病気です。
乳がんと子宮がんは早期発見・治療が大切になってきます。
そのためには、定期的な検診を受けておく必要があります。
女性なら誰しもが発症する可能性のある乳がんと子宮がんですが、この2つの病気が併発することは起こり得ることなのでしょうか?
今回の記事では、乳がんと子宮がんが併発する可能性や、共通点について詳しく解説をしていきます。
また、乳がんと子宮がんが発症しやすい年齢についても合わせて紹介をしているので参考にしてください。
乳がんと子宮頸がんや子宮体がんは併発する?
まず初めに、「がん」とは体内で「がん細胞」が増殖することによって発症する病気です。
がんを完全に予防することは難しいとされており罹患するリスクは誰しもが持っているものです。
がんの中でも、乳がんや子宮がんは女性に特有の病気です。
乳がんや子宮頸がん・子宮体がんが併発することは、確率的には低いですが十分に起こり得ます。
乳がんと子宮がんの原因の一つとして、女性ホルモンの一種である「エストロゲン」が関係すると言われています。
そのため、場合によっては乳がんと子宮がんが同時に発症することがあるのです。
ここでは乳がんと子宮がんの共通点や、関係性について解説をしていきます。
乳がんや子宮がんの原因に共通点はある?
先ほども触れましたが、乳がんや子宮がんの原因にはエストロゲンが深く関係しています。
がん細胞の多くはエストロゲンの影響を受けて増殖していくとされており、エストロゲンが分泌される期間が長くなるほど、乳がんや子宮がんの発症率が上がっていきます。
それでは、乳がん、子宮頸がん、子宮体がんそれぞれの原因を詳しく見ていきましょう。
乳がんの原因!
乳がんが発症するはっきりとした原因は未だに分からない部分が多いのですが、発症の6割~7割はエストロゲンが原因になっているとされています。
エストロゲンは女性ホルモンの一種であり、月経から排卵までの間に最も分泌量が増えます。
エストロゲンには乳がん細胞を増殖・分裂させる効果があることが確認されており、分泌された量が多いほど乳がんの発症率が高くなります。
そのため、乳がんの発症リスクが高いのは、初潮が来るのが早かった人や閉経が遅かった人、出産経験のない人など、エストロゲンの分泌期間が長かった人になります。
なお乳がんが発症した人のうち、約5%~10%は遺伝によるものであることも確認されています。
乳がんにかかったことのある人との血縁関係が近ければ近いほど、発症リスクが上がります。
子宮頸がんの原因!
子宮頸がんは、子宮頚部にがん細胞が発生することにより引き起こされる病気です。
発症の原因としては、HPV(ヒトパピローマウイルス)と呼ばれるウイルスへの感染が関係しています。
HPVは主に性交渉によって感染します。
性交渉の経験がある女性のうち80%が一度はHPVに感染すると言われており、必ずしも子宮頸がんに発展するわけではありません。
たいていの場合、自己免疫力によってHPVは排除されます。
しかし、自然に排除されなかったHPVが子宮頚部に残ると、時間を掛けて徐々にがん細胞へと進行していきます。
がん細胞に発展する前の状態のことを「異形成」と呼びます。
子宮頸がんは、定期的に検診を受けていれば異形成の段階で早期発見をすることができます。
がん細胞に進行する前の異形成の段階であれば、治療を受けることでほぼ100%治すことができます。
子宮体がんの原因!
子宮体がんは子宮体部にがん細胞が発生することによって引き起こされる病気です。
子宮内膜から発生することから、子宮内膜がんとも呼ばれます。
子宮体がんは、子宮内膜が異常に厚く増殖することが原因でがん細胞が進行し、発症に至ります。
子宮内膜は、エストロゲンの分泌が原因で増殖して分厚くなっていきます。
通常であれば月経が起こったときに内膜は剥がれ落ちるのですが、エストロゲンの分泌量が多すぎると、増殖した内膜が剥がれ落ちずに子宮体部に残ってしまうことがあります。
では、エストロゲンの分泌量が増える原因とは何なのでしょうか?
女性ホルモンには、エストロゲンの他にプロゲステロンと呼ばれるものがあります。
プロゲステロンにはエストロゲンを抑制する働きがあるのですが、ホルモンバランスが崩れるとエストロゲンの分泌が過剰になることがあります。
ホルモンバランスが崩れやすくなるのは閉経後です。
初期症状として見逃してはいけないのが不正出血なので、閉経後に不正出血が見られたときは早めに検査を受けましょう。
乳がんの治療薬と子宮体がんとの関係性!?
乳がんのホルモン療法の一つとして、「ノルバデックス錠(タモキシフェン)」を服用することがあります。
ノルバデックス錠には抗エストロゲン作用が含まれており、エストロゲンの作用を抑制することによって乳がんの治療をしていきます。
ノルバデックス錠は5年間の投与が一般的とされており、長い目で見てホルモン療法を続けていく必要があります。
ノルバデックス錠を服用し続けることの副作用の一つとして、子宮体がんのリスクが上がると言われています。
ノルバデックス錠はエストロゲンの作用を抑制するのですが、子宮内膜を増殖させる作用があることが確認されています。
そのため、子宮内膜増殖症や子宮体がんの発症リスクが通常よりも上がってしまうのです。
ノルバデックス錠によるホルモン療法を続けている間は、子宮内膜が増殖していないか定期的な検査を受ける必要があります。
乳がんと子宮がんの症状に共通点はある?
では、乳がんと子宮がんの症状に共通点はあるものなのでしょうか?
乳がんと子宮がんの症状は異なるものですが、双方の症状が重複して起きている場合には早期発見のきっかけに繋がります。
ここでは乳がん、子宮頸がん、子宮体がんそれぞれの症状について紹介し、共通点を見ていきます。
乳がんの症状!
乳がんの場合、主な症状は「乳房のしこり」です。
また、乳首がただれてきたり、分泌物が出たりするのも乳がんの症状に当たります。
発症の初期は自覚症状がほとんど分からないのですが、進行してくると乳房の痛みやくぼみ、腫れ、赤み、乳房の左右差などの症状が出てきます。
これらは乳がんに特有の症状なので、気を付けておきましょう。
子宮頸がんの症状!
子宮頸がんは、発症初期の場合、ほとんど症状が見られません。
進行が進んでくると、不正出血やおりもの異常などの症状が現れ始めます。
そのまま病気の進行を放置していると、下腹部の痛みなどの症状が出てきます。
無症状の状態のとき、多くの場合は子宮頸がん検診によって病気が発覚します。
早期発見のためには年に一度の検診を受けることが大切です。
子宮体がんの症状!
子宮体がんの場合、症状は子宮頸がんと同じく不正出血やおりもの異常が最も多いです。
特に閉経後の不正出血には注意が必要です。
また、こちらも子宮頸がんと同様、下腹部に痛みが現れることがあります。
他には病気の進行によって、下肢にむくみの症状が出ることもあります。
不正出血が頻繁に起きていると感じたときは、早めに病院へ行って検査を受けてください。
乳がんや子宮がんにかかりやすい年齢層!
最後に、乳がんや子宮がんは年齢層によってかかりやすさが異なってきます。
ここでは乳がんと子宮がんにかかりやすい年齢層を解説していきます。
若年層のがん患者が急増している?
乳がんや子宮頸がんといった婦人科系の病気は、30代後半~50歳ごろまでが発症のピークとされていました。
しかし、近年では35歳未満の若年層にもがん患者が急増していると言われています。
特に若年層の乳がんの罹患率と死亡率は年々増加傾向にあります。
近親者にがん患者の人がいたり、過度に喫煙や飲酒の習慣があったり、肥満気味の人は、年齢が若くてもがんを発症するリスクが高くなるため気を付けましょう。
がんを完全に予防することはできませんが、生活習慣でかかる確率を低くすることはできます。
特にかかりやすい年齢層!
では、乳がんや子宮がんに特にかかりやすい年齢層はどれくらいなのでしょうか?
まず、乳がんの場合は30代後半から罹患率が増加し始めます。
そして、40代後半~50代前半までが罹患のピークとなっています。
ただし、乳がんは若年層でも閉経後でも発症する確率があるため、年齢を問わず定期的な検査を受けておく必要があります。
次に、子宮頸がんの場合は20歳を過ぎたあたりから罹患率が徐々に増え始め、30代~40代が罹患のピークとなっています。
子宮頸がんはウイルスが原因となって発症する病気ですので、性交渉の経験がある女性であれば、年齢には関係なく誰もが罹患する可能性があるものです。
反対に、子宮体がんの場合は閉経後に病気が発症することが一般的であるため、40代後半から罹患率が増え始めます。
罹患のピークは50代~60代となっているため、閉経後は発症のリスクがあることを覚えておきましょう。
早めの検診が早期発見のきっかけに!
乳がん、子宮頸がん、子宮体がんは、女性であれば誰もが罹患する可能性のある病気です。
病気が進行すれば治療が大変になるだけでなく、場合によっては手術を受ける必要も出てきます。
どのがんに対しても大切なのは病気の早期発見です。
乳がんや子宮がんは検査を受けることで比較的発見をしやすい病気であるため、適切な受診間隔で定期的に検査を受けておきましょう。
万が一がんが見つかったとしても、早期に発見できれば完治させることも可能です。
しっかりと病院で検査を受け、がんが進行するリスクを少しでも減らしましょう。