あなたの飲んでいる薬は、暑さへの耐性を著しく弱めている可能性があります。
特に、抗うつ薬や心臓に関わる薬剤は脱水や熱中症などのリスクを増やす可能性があることが知られています。
今回の記事では、猛暑をより危険にする医薬品について詳しく解説します。
ケース1「猛暑のバージニア州で熱中症搬送」
2024年6月、バージニア州西部の都市ロアノークで開催されたパレードに、27歳の女性Breana Turner氏が参加しました。
蒸し暑い午後に参加した彼女は、突然「耳鳴り、動悸、嘔吐」の症状に襲われ、緊急救命士によって搬送されました。
Turner氏は抗うつ薬「インフェクサー(ベンラファキシン)」を服用しており、薬の作用によって熱中症の症状が現れやすい状態になっていたのではないかと緊急救命士が語っていたそうです。
Turner氏は2年前に服薬を開始しており、通常は朝のトレーニング後に飲むよう調節していました。
そのため、今まで暑さに対してこのような反応を示したことが無く、大変驚いていたそうです。
インフェクサー(ベンラファキシン)がどのようにして熱中症のリスクを増やしたのか
インフェクサーはセロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害薬と呼ばれる抗うつ薬に分類され、視床下部(体温調整を行う脳)に作用するため、過度の発汗を引き起こす事があります。
こうした作用から、「内部体温の調整や冷却機能を妨げる働き」が妨げられ、暑さに対して脆弱な状態になることがあります。
うつ病や神経障害に伴う痛みを改善するためのお薬です。
神経の働きを活発化させる神経伝達物質セロトニンおよびノルエピネフリン(ノルアドレナリンともいう)の再取り込みを阻害することにより、脳内のセロトニンおよびノルエピネフリンの濃度を高めて、意欲低下を改善させます。
また、以下のような医薬品を服用している方にも同様の症状がみられる事があります。
ケース2「ただ夕日を眺めていただけで熱中症」
28歳の女性Leigha Standinger氏は2020年、抗うつ薬を飲み始めてから初めての夏に熱中症で苦しみました。
彼女は夫や友人と共に、オンタリオ州とニューヨーク州の間に広がるサウザンド諸島にいました。彼らは桟橋の外に座って、夕日を眺めていました。
その時の気温は32℃程度。
Leigha氏は立ち上がると、突然視界がぼやけました。
「何かがおかしい、何か変だ」と言ったそうです。
夫はLeigha氏がパニック発作になったと思いました。
程なく、Leigha氏は数歩歩いて倒れてしまいました。
Leigha氏は救急車の担架で目を覚まし、「死んだと思った」と語りました。
救急処置室で、医師は熱中症と診断しました。
体温は40℃を超え、生命を脅かす状態だったと語ります。
彼女が服用していた抗うつ薬ゾロフトが熱さに敏感にさせてしまったのではないか、との見解を示しました。
彼女はその薬のリスクについて初めて知ったといいます。
「もっと用心しなければならなかったのだろうが、そのことに全く気付かなかった。」
暑さへの対策を行う事でリスクに適応できる場合もある
Leigha氏はニューヨーク州ロチェスター近郊で、ハイキングやハーフマラソンを走っていますが、現在は暑さのリスクに適応しているといいます。
彼女はランニングの際、塩タブレットを携帯し、朝と寝る前に電解質を摂取しているそうです。
ナトリウムやカリウムなどのミネラル分。汗には水分とともに塩分などの電解質が含まれています。
熱中症予防のためには、水分と共に電解質の補給も重要。
彼女にとって、水分補給は熱中症による健康問題を回避する非常に重要なことです。
熱中症になると、以下のような症状が現れます。
- めまい
- 吐き気
- 疲労感
- 発汗
- 痙攣
これらの症状を感じたらすぐに水分補給し、涼しい場所で安静にすることが推奨されます。
薬の服用を避けるのではなく、暑さを避けるように生活を見直してみましょう。
この記事の参考サイト
熱中症の基礎知識
The Medications That Make Extreme Heat Even Riskier:WSJ
SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)の解説