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アルツハイマー病の新薬によって症状の進行を遅らせる事ができるようになる

アルツハイマー病の新薬によって症状の進行を遅らせる事ができるようになる

2024年7月2日、米国のイーライ・リリー社という製薬会社が開発した、新しいアルツハイマー病の薬であるケサンラが米国食品医薬品局(FDA)で正式承認されました。
この承認により、今後のアルツハイマー病治療法が大きく変わることが期待されています。

今までのアルツハイマー病治療は症状を和らげる事しかできなかった

リリー社の「ケサンラ(ドナネマブ)」やエーザイ社&バイオジェン社の「レケンビ(レカネマブ)」が承認されるまで、アルツハイマー病の治療法は限られていました。

アルツハイマー病と診断された患者は、病気の進行を遅らせることはできず、主に症状を和らげるための薬を飲むだけで、病気が進行すると自分で生活することが難しくなり、多くの人が介護施設などに入らざるを得なくなっていました。

しかし、今回承認されたリリー社のケサンラなどが広く使われるようになると、アルツハイマー病の進行を遅らせることができ、より多くの人が生活を維持できるようになります。

今後、アルツハイマー病の治療は、がんやリウマチの治療と同じように、患者が定期的に病院に通って治療を受けるスタイルになる可能性があります。

「患者さんの症状の進行を遅らせることで、より長く自立して生活できるようになるでしょう」と、ニューヨーク大学・ランゴーン医療センターで臨床試験責任医師として、リリー社の臨床試験に参加したマーティン・サドウスキー医師は話しています。

ケサンラ(ドナネマブ)とは

認知症の進行抑制に用いられる点滴タイプのお薬です。
脳内のアルツハイマー病の原因になるアミロイドβを除去することで、認知障害の進行を抑制する働きがあります。

1,730人以上の患者を対象とした臨床試験において、18ヶ月の治療期間中、プラセボ(偽薬)の投与を受けた人々と比較して患者の認知機能の低下を35%遅らせる効果がありました。

アミロイドβとは

アルツハイマー病の原因とされるタンパク質です。

健康な人の脳内にも生成されますが、通常は分解され排出されます。
こちらのタンパク質が、何らかの原因で分解排出されずに脳内に蓄積してしまうと脳細胞が死滅し、アルツハイマー病を発症するとされています。
ケサンラやレケンビには、このタンパク質を除去する作用があります。

米国の現状と新薬「レケンビ」の承認

米国では約600万人もの人がアルツハイマー病になっています。
長い間、医師や患者、その家族は、病気の進行を止められる薬を製薬会社にずっと求めてきましたが、これまで多くの薬が効果を示さず、失敗に終わってきました。

リリー社の新薬は、昨年、承認されたレケンビに続く、同様の作用を持つアルツハイマー病薬です。

レケンビは初期の導入が遅れました。
病院や医療システムが、どの患者が薬の対象になるかを見極め、注射薬を投与する場所を整備し、副作用を監視する準備に時間を要しました。

これまでにレケンビが投与された患者は数千人に過ぎませんが、バイオジェンは今年は使用が増加していると発表しています。
レケンビの今年第1四半期の売上は、世界で約1900万ドルでした。

レケンビ(レカネマブ)とは

認知症の進行抑制に用いられる点滴タイプのお薬です。
アルツハイマー病による認知障害の進行を抑制する働きがあります。
従来の症状を緩和させるタイプのお薬ではなく、原因を除去するタイプのお薬のため、新しい認知症治療として大きな期待が寄せられています。

更なる新薬「ケサンラ」の承認でアルツハイマー病治療の理想が現実的に

リリー社の新薬「ケサンラ」の参入により、アルツハイマー病の治療法に更なる可能性が出てきました。
リリー社は、この新しいアルツハイマー病治療薬を多くの人に届けるための十分な資金力と影響力で新しいアルツハイマー薬の使用を促進することを計画しています。

「まず最初にやるべきことは、新しい薬が利用できることをもっと広く世間に知らせることです」と、リリー社の神経科学部門の責任者であるアン・ホワイト氏は話しています。

彼女は、薬の普及には時間がかかると予想していますが「長期的には多くの人々が治療を受けることが出来るようになるだろう」とも延べています。

今後の課題はアルツハイマー病治療の保険適用

アルツハイマー病治療の普及を拡大する上での大きな課題は、保険の適用を確保することです。

ケサンラは月に一度投与され、6ヶ月間の治療で約12,522ドル、12ヶ月間で32,000ドル、18ヶ月間で48,696ドルかかります。
ほとんどの患者は18ヶ月以内に治療を完了すると予想され、その後の費用は発生しません。

レケンビは年間26,500ドルの費用がかかり、メディケア(米国の高齢者向け公的医療保険制度)でカバーされています。

リリー社はケサンラもメディケアでカバーされることを期待しています。
ケサンラの治療にかかる患者の自己負担額は、治療期間や保険の内容に依存します。

カリフォルニア州サンマルコスにあるニューロンクリニックのアルツハイマー専門医、ホセ・ソリア医師は、リリー社がケサンラの投与を医療機関が安定して続けられるようにサポートできるかもしれないと述べています。

ニューロンクリニックでは、50人以上の患者がレケンビの治療を受けていますが、この治療を行うために、スタッフや医師の時間を多く使っており、その結果、費用をまかなうのが難しく、損失を出しています。
また治療待機中の患者が約200人もいる状況です。

モントリオール銀行の投資銀行部門であるBMOキャピタルマーケッツの投資分析専門家であるエヴァン・シーゲルマン氏は、リリー社が医療機関にケサンラを優先使用薬のリストに加えるよう説得する必要があると考えており、成功の可能性も高いと予測しています。

ケサンラの世界での年間売上が70億ドルに達するだろうとも予測しています。

日本での認知症治療薬の費用

「ケサンラ」「レケンビ」は日本でも認知症治療薬として承認済みとなっていますが、ケサンラは2024年9月24日に薬事承認されたばかりのため、2024年10月31日現在ではまだ薬価が定まっていません。
既に薬価が定まっているレケンビと近しい価格になることが予想されます。

2024年11月には薬価が定まり、保険が適用される見込みです。

新薬の登場で今後のアルツハイマー病治療は大きく変わる

「ケサンラ」「レケンビ」これらの2つの新薬はアルツハイマー病の進行を遅らせる事ができるため、これまで良い選択肢がなかったアルツハイマー病患者や医師にとって魅力的であると信じられています。

日本でも承認されているお薬のため、日本の現場でも認知障害に悩む方の認知能力が少しでも長く続くことが期待されています。

この記事の参考サイト

ケサンラ®(ドナネマブ(遺伝子組換え))公式サイト
レケンビ 公式サイト
Approval of Newest Alzheimer’s Drug Will Accelerate New Era of Treatment:WSJ
アミロイドβとは