重度のアレルギー治療に用いられてきた注射薬「ゾレア」が、食物アレルギー治療薬としてFDAに承認されました。
今回の記事では、ゾレアについて詳しく解説します。
FDAが食物アレルギー治療薬として「ゾレア」を承認
ノバルティス社とロシュ・ホールディングスは、米国食品医薬品局(FDA)が、複数の食物に対するアレルギー反応を減少させるための治療薬として「ゾレア(オマリズマブ)」を承認したと発表しました。
両社は2024年2月16日(金曜日)、ゾレアが製造販売承認IgE(免疫グロブリンE)に媒介される食物アレルギーを持つ1歳以上の患者を対象にして承認されたと発表しました。
IgE(免疫グロブリンE)は、体内でアレルギーの原因となる物質(アレルゲン)に反応して作られる「抗体」です。
アレルゲンとは、体に異常な反応を引き起こす物質のことで、食物アレルギーの場合、ピーナッツや牛乳、卵などがアレルゲンとなります。
これらが体内に入ると、IgE抗体が反応し
- じんましん
- かゆみ
- 呼吸困難
- アナフィラキシー(急激な全身反応)
などの症状を引き起こします。
この反応は速やかに起こり、時には重症化します。
米国で食品や薬が安全かどうかをチェックする政府の機関です。
日本で言う「厚生労働省(厚労省)」の役割に似ていて、食品や薬が国民にとって安全で効果があるかどうかを確認しています。
例えば、新しい薬が米国で販売される前に、FDAがその薬が本当に効くのか、また危険がないかを調べて承認します。
これによって、米国の人々は安心して食品を食べたり薬を使ったりできるようになっています。
ゾレアはアレルギー性疾患の注射薬
ゾレアは重症のアレルギー性疾患の治療に用いられる注射薬です。
生物学的薬剤に分類される高価なお薬です。
以下のような適応症に用いられます。
- 重度のアトピー性皮膚炎
- 重度のアレルギー性鼻炎(花粉症など)
- 突発性の慢性蕁麻疹
- 気管支喘息
日本では2009年から使用されている薬です。
皮下注射で投与される薬のため、定期的な通院が必要になります。
タンパク質や遺伝子などの生物由来の成分を使用して製造される医薬品です。
これにより、伝統的な化学合成薬では難しい免疫系の疾患やガンなどに対する治療が可能になります。
ゾレアはその代表例で、体内の抗体を標的にし、アレルギー反応や炎症反応を抑える働きを持っています。
生物学的製剤は複雑な製造過程を経るため、通常の医薬品に比べて高価です。
臨床試験によって食物アレルギーに対する効果が認められた
今回のFDAの承認は、以下のような食物にアレルギーがある1歳から55歳の患者を対象にした第3相臨床試験「OUtMATCH試験」で、ゾレアの効果が確認されたことに基づいています。
- ピーナッツ
- 牛乳
- 卵
- 小麦
- カシューナッツ
- ヘーゼルナッツ
- クルミ
この試験では、少なくとも2つ以上の食物アレルギーを持つ患者で、ゾレアがアレルギー反応を抑える効果が確認されました。
今後の食物アレルギー治療
今後、食物アレルギーの治療薬としてゾレアが用いられるようになりますが、ゾレア使用中の患者でもアレルギー源となる食物の摂取を引き続き避ける必要があるようです。
ゾレアは、注射剤として処方、投与される生物学的薬剤であり、アレルギー反応が起きた際に使用する緊急用の薬ではありません。
例えば、アレルギー反応が出たときに緊急的に使うエピペンのような薬ではなく、あらかじめアレルギーを抑えるために使う薬なので、アレルギー源となる食物を積極的に摂取する為のお薬ではないことを覚えておきましょう。
今後は米国において、ノバルティス・ファーマシューティカルズ社とロシュグループ傘下のジェネンテック社がゾレアを共同開発し、共同で販売促進を行う予定です。
この記事の参考サイト
医療用医薬品 : ゾレア
Novartis, Roche’s Food Allergies Treatment Xolair Gets FDA Approval:WSJ