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患者を依存させることなく痛みを和らげる新薬が発見される

患者を依存させることなく痛みを和らげる新薬が発見される

癌などの重度の痛みや、大きな手術後の痛み止めとして「バイコディン(Vicodin)」などの鎮痛オピオイド薬が使われることがありますが、依存性の強さから使用を避けたい人々が多く存在しています。
米国の製薬会社バーテックス社が、鎮痛オピオイド薬の代替薬になる可能性のある新薬を発明したと発表しました。

オピオイド薬の代替薬になりうる新薬「VX-548」

2024年1月30日(火曜日)、バーテックス・ファーマシューティカルズ社は、依存性を引き起こさない新しい鎮痛薬「VX-548」に関する注目すべき臨床試験の結果を発表しました。

VX-548は、臨床試験に参加した被験者が訴えた「中等度から重度の急性疼痛」を和らげる効果があることが確認されました。
もしこの薬が承認されれば、今までにない新しいタイプの鎮痛薬として使われる可能性があります。

ただし、この試験薬はオピオイドの代替手段にはなり得るものの、米国で広く使用されているオピオイド薬「バイコディン(Vicodin)」を上回る効果は示さなかったため、オピオイド鎮痛薬全体を完全に置き換えることは難しいと考えられています。

オピオイド鎮痛薬とは

モルヒネやヘロインのような麻薬性鎮痛薬の総称で、非常に強力な痛み止めです。
これらの薬は、痛みを抑えるために脳や脊髄の受容体に作用しますが、長期使用や高用量の服用により依存症や耐性が生じやすくなります。

米国では、オピオイドの過剰摂取が社会問題となっており、依存症による死亡者が増加しています。
そのため、非依存性の痛み止めの開発が急務とされています。

バイコディンとは

ヒドロコドンとアセトアミノフェンの2つの成分を含むオピオイド系鎮痛薬です。
ヒドロコドンは強力な鎮痛作用を持つ麻薬性鎮痛薬であり、依存性のリスクがあります。

一方、アセトアミノフェンは解熱鎮痛薬で、非麻薬性の成分です。
この2つの成分が組み合わさることで、バイコディンは中等度から重度の痛みを効果的に和らげます。

バーテックス社の最高科学責任者デビッド・アルトシュラー氏は

「もしこの薬が承認されれば、依存性のあるオピオイドを避けたいが、痛みを和らげたい患者にとっては、新しい選択肢となるでしょう」

とインタビューに答えています。

新薬「VX-548」の仕組み

バーテックス社のこの薬「VX-548」は、新しいタイプの鎮痛薬で、痛みの信号を伝える体内の仕組みに作用します。
VX-548には、ナトリウムが細胞内外に流れる「NaV1.8」というチャンネルをブロックすることで、痛みの信号が脳に伝わるのを防ぐ働きがあります。

NaV1.8とは

ナトリウムチャネルの一種。
細胞内外にナトリウムイオンを移動させるための通路で、神経細胞の活動に重要な役割を果たします。
痛みを感じる際、このチャネルを通じてナトリウムイオンが流れ込み、神経細胞が痛みの信号を脳に伝えます。

「NaV1.8」と呼ばれる特定のチャネルなどは、痛みの信号伝達に強く関与しており、鎮痛薬のターゲットとして注目されています。

臨床試験の結果

バーテックス社は、VX-548を対象に、2,400人以上の被験者を対象とした第3相臨床試験を3つ実施しました。
その内、2つの臨床試験では、VX-548とプラセボ、またはバイコディンとの比較が行われました。

被験者は腹部形成術(お腹の整形手術)または足の手術を受けた人々でした。

3つ目の臨床試験では、外科的手術や非外科的な急性疼痛を対象に薬の効果が評価されました
3つの試験すべてにおいて、被験者に重篤な副作用は見られませんでした。

オピオイドを望まない人にとって、選択肢が増えるのは非常に良い事

バーテックス社によると、米国では毎年約8,000万人の人が中等度から重度の急性疼痛に対して鎮痛薬が処方されています。
多くの患者がオピオイドを使う理由は、痛みを効果的に和らげるためです。
しかし、オピオイドは依存性が非常に高く、その使用が米国で依存症や過剰摂取による死亡を引き起こす原因の一つとなっています。

RBCキャピタルのアナリストであるブライアン・エイブラハムス氏は、VX-548の使用用途について
「特定の患者層向けには効果があるかもしれないが、急性疼痛の治療において従来の治療法を大きく上回る効果は期待できない」
と述べています。

また、以下のようにも述べています。
「NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)を使用できない患者や、オピオイドを使用すると依存症リスクがある患者にとって、有効な代替手段となる可能性が可能性が高い。」
「ただし、痛みの治療全体を大きく変えるような薬ではありません」

VX-548はオピオイドの鎮痛作用を完璧に上回る薬ではありませんが、オピオイドを望まない人にとって良い代替案になることが期待されています。
承認されれば、バーテックス社はこの薬をさまざまな種類の痛みに対して販売することを目指しています。

この記事の参考サイト

ヒドロコドン
オピオイド
New Drug Shown to Relieve Pain Without Getting Patients Addicted:WSJ