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FDAに承認されたアルツハイマー病治療薬「レケンビ」の徹底解説

FDAに承認されたアルツハイマー病治療薬「レケンビ」の徹底解説

アルツハイマー病は、認知症の中で最も一般的なタイプであり、世界中で高齢化が進む中、大きな社会的課題となっています。
「レケンビ(Leqembi)」は、アルツハイマー病の進行を抑制する新たな治療選択肢として注目されています。
この画期的な薬剤は、エーザイとバイオジェンが共同開発したもので、病気の根本原因にアプローチし、患者の生活の質向上を目指します。

「レケンビ」の特徴と効果

エーザイとバイオジェン社が共同開発した「レケンビ(Leqembi)」は、アルツハイマー病の進行を遅らせる初の抗アミロイド抗体薬です。
この治療法は、アルツハイマー病の進行を抑える可能性を示す新たな選択肢として注目されています。

2023年1月6日にFDAによって条件付きで承認され、2023年1月23日からアメリカで販売が開始されました。
日本では2023年9月25日に製造販売承認を取得し、2023年12月20日から販売が開始されました。

レケンビにはアミロイドと呼ばれる蛋白質を脳内から除去する作用があります。
この作用により、患者の認知機能低下を抑制することが期待されています。

「レケンビ」の作用機序

「レケンビ」は、アルツハイマー型認知症の特徴である脳内のアミロイドβ(ベータ)という異常蛋白質に作用します。
具体的には、以下のプロセスを通じて効果を発揮します

  • アミロイドβのターゲティング: 抗体がアミロイドβの塊に結合し、異常蓄積した蛋白質を識別します。
  • 免疫システムの活性化: 結合したアミロイドβを免疫細胞に認識させ、これを分解・除去します。
  • 神経細胞の保護: アミロイドβが減少することで、神経細胞の機能低下や死滅を防ぎ、脳内の炎症反応を抑制します。

これらの作用により、脳内のアミロイドβが減少し、認知機能の低下が抑制されることが期待されています。

臨床試験とFDA承認

「レケンビ」は臨床試験で、軽度認知障害や軽度のアルツハイマー型認知症患者において、病気の進行を27%抑制するという成果を上げました。
試験には1,795名の患者が参加しました。

試験は18ヵ月間にわたり実施され、無作為化プラセボ対照試験という厳格な方法で行われました。
この試験により、以下の重要な結果が得られました。

  • 認知機能スコア(CDR-SB)の低下が0.45ポイント抑制されました。
  • 脳内のアミロイド蛋白質レベルが、投与開始6ヵ月後に68%削減されました。

認知機能スコア(CDR-SB)は、アルツハイマー病や認知症の進行を評価するための標準的な指標です。
CDR-SBは「臨床認知症評価尺度(Clinical Dementia Rating)」の一部であり、患者の日常生活の能力、記憶、判断力など6つの領域について評価を行います。

スコアが高いほど認知機能の低下が重度であることを示します。
この試験では、レケンビがプラセボと比較してスコアの悪化を抑制したことが確認されました。

認知症の仕組み

認知症とは、記憶力や思考力、判断力が低下し、日常生活に支障をきたす病態を指します。
最も一般的なタイプはアルツハイマー型認知症で、全体の60~70%を占めています。

アルツハイマー型認知症は脳内にアミロイドβ(ベータ)と呼ばれる蛋白質が蓄積し、神経細胞の死滅を引き起こすことで進行します。
その他の認知症の種類には、血管性認知症やレビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などがあります。

「レケンビ」は特にアルツハイマー型認知症の初期段階(軽度認知障害および軽度のアルツハイマー型認知症)に有効であるとされています。
この段階では、アミロイドβの蓄積を減少させることで、病気の進行を抑える可能性があります。

価格と普及の課題

レケンビは、アメリカではは年間26,500ドル(約354万円)で販売されており、価格の高さが課題となっています。

適正価格とされる範囲を超えることから、普及に向けたコスト削減が求められています。
また、アメリカの医療保険制度「メディケア」が保険適用を拒否しているため、多くの患者が利用できない現状があります。

副作用とリスク管理

臨床試験では、脳出血や脳浮腫などの副作用が報告されており、特に抗凝固薬を使用している患者には注意が必要とされています。

試験では、レケンビ投与群の17.3%が脳出血を経験し、12.6%が脳浮腫を発症しました。
MRI検査を用いた監視が推奨されており、治療開始後の慎重な経過観察が求められます。

今後の展望

エーザイは「レケンビ」の投与頻度を減らすことで、患者の負担を軽減し、治療コストを抑える研究を進めています。
また、他の製薬会社も類似の抗アミロイド薬の開発を進めており、アルツハイマー病治療における選択肢が広がる可能性があります。

この記事の参考サイト

認知症のメカニズム
医療用医薬品 : レケンビ
抗アミロイドβプロトフィブリル抗体「レカネマブ」の早期アルツハイマー病に対する臨床第Ⅲ相Clarity AD検証試験結果
New Alzheimer’s Drug Approved by FDA, Promises to Slow Disease:WSJ