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数十年ぶりに統合失調症治療薬として新薬が承認される

数十年ぶりに統合失調症治療薬として新薬が承認される

2024年9月、コベンフィと呼ばれる統合失調症治療薬がFDAによって承認されました。
今回の記事では、コベンフィの効果と承認までの背景について解説します。

コベンフィ(cobenfy)とは

コベンフィは統合失調症治療に用いられる医薬品です。
2024年9月にFDAに承認されており、翌月の10月より発売されています。

有効成分としてザノメリンが配合されており、ムスカリン受容体作動薬に分類されています。

ムスカリン受容体とは

ムスカリン受容体は、脳や末梢神経系に存在するアセチルコリン受容体の一種です。

記憶、学習、注意力などの認知機能や、感情や情報の処理を司る前頭前野や辺縁系に多く存在しています。

コベンフィの働き

有効成分ザノメリンは、ムスカリン受容体のM1受容体とM4受容体に働きかけます。

ザノメリンがM1受容体を活性化させることで、注意力や判断力などの認知機能の向上に繋がります。

M4受容体が刺激されると、過剰なドーパミン活動が抑制され、幻覚や妄想といった陽性症状が緩和されます。

コベンフィの臨床試験結果

EMERGENT-2試験と呼ばれる第3相臨床試験では、統合失調症患者を対象に、コベンフィの有効性と安全性が評価されました。

主要評価項目として、PANSS(Positive and Negative Syndrome Scale:陽性・陰性症状評価尺度)スコアの変化が用いられました。

試験の結果、コベンフィを投与された患者は、プラセボ群と比較して、PANSSスコアが有意に減少しました。
具体的には、コベンフィ群でのスコア減少は約17.4ポイントであったのに対し、プラセボ群では約5.9ポイントの減少でした。
この差は統計的に有意であり、コベンフィの有効性を示しています。

EMERGENT-3試験と呼ばれる別の第3相臨床試験であるEMERGENT-3でも、同様のデザインで研究が行われました。
結果として、コベンフィ群ではPANSSスコアが約16.6ポイント減少し、プラセボ群の約6.6ポイントの減少と比較して有意な差が認められました。
これらの結果は、コベンフィの一貫した有効性を支持しています。

コベンフィの使い方や注意点

コベンフィは経口薬として提供されます。
1日1回または複数回の服用が推奨されており、食事の影響を受ける事が無い為、利便性に富んだ統合失調症治療薬として親しまれています。

口の渇きや吐き気、不快感などの副作用が現れる事があるため、服用初期は少ない用量での服用が推奨されています。

コベンフィの副作用(臨床試験結果)
  • 吐き気(約17%)
  • 嘔吐(約9%)
  • 便秘(約17%)
  • 口渇(約9%)

元々はアルツハイマー型認知症の治療薬として開発された

コベンフィの有効成分ザノメリンは、元々アルツハイマー型認知症の治療薬として開発されていた背景があります。

1997年にイーライリリー社によって研究されていましたが、著しい副作用(嘔吐や吐き気)によって開発が中止されていました。
副作用を軽減するための成分を配合することで、約30年の時を経て新しい統合失調症治療薬として発売が開始されました。

今後はアルツハイマー型認知症としての効果も期待されている

現在は統合失調症治療薬として承認されているコベンフィですが、今後の研究により、アルツハイマー型認知症が新たな適応症に加わる可能性が期待されています。

この記事の参考サイト

Old Drug Repurposed for Schizophrenia Could Reap Alzheimer’s Windfall
EMERGENT-2試験:NCT04659161
EMERGENT-2試験:NCT04738123