ファイザーの新しい血友病治療薬「ヒムパブジ(マルスタシマブ)」が、米国食品医薬品局(FDA)によって承認されました。
ヒムパブジは、血友病Aおよび血友病Bの患者を対象とし、週1回の皮下投与で出血を予防または軽減する新しい治療選択肢です。
従来の静脈内注射と異なり、投与回数を減らし、患者の負担を軽減できる点が特徴です。この記事では、ヒムパブジの作用、投与方法、臨床試験の結果について詳しく解説します。
ヒムパブジが血友病の治療薬として承認
2024年10月、ファイザーの新しい治療薬ヒムパブジ(マルスタシマブ)が、米国食品医薬品局(FDA)により血友病Aおよび血友病Bの治療薬として承認されました。
この薬は血液凝固因子を補充する従来の治療法とは異なり、週1回の皮下投与で血友病患者の出血リスクを予防または軽減する新しい選択肢を提供します。
ヒムパブジの働き・効果
ヒムパブジは、従来の凝固因子補充療法とは異なるメカニズムで血液凝固を促進する医薬品です。
組織因子経路インヒビター(TFPI)と呼ばれるタンパク質の働きを阻害する事で、血液凝固の活性化を促し、出血しやすい状態を改善します。
組織因子経路インヒビター(TFPI)は、血液の過剰な凝固を防ぐために働くタンパク質です。
主に血液凝固の初期段階を抑制する役割を持ち、血液が不要に固まるのを防ぐ存在です。
ヒムパブジが対象とする血友病患者
ヒムパブジは、以下の血友病患者を対象としています。
- 血友病A(先天性第VIII因子欠乏症)で、インヒビターを持たない患者
- 血友病B(先天性第IX因子欠乏症)で、インヒビターを持たない患者
ヒムパブジの投与方法
従来の血友病の治療方法では、患者は週に複数回の静脈内注射が必要でした。
しかし、ヒムパブジは週1回の皮下投与で済むため、患者の負担が軽減されるというメリットがあります。
FDAが認めたヒムパブジの革新性
FDAは、ヒムパブジが血友病Bに対する初の因子フリー治療薬であり、週1回の投与で済む点を評価しました。
また、この薬は 「血液凝固過程におけるタンパク質を標的とする、初めての治療選択肢」であることも強調されています。
ヒムパブジの臨床試験結果
240人を対象に実施された第3相臨床試験では、従来治療薬に比べヒムパブジ投与グループに年間出血率の低下などの有効性が認められました。
従来の治療グループ | ヒムパブジ投与グループ | |
---|---|---|
年間出血率(ABR) | 平均3.9回(中央値2.5回) | 平均1.6回(中央値0.8回) |
無出血率 | 45% | 71% |
従来治療薬に比べ、少ない回数の投与にも拘らず、ヒムパブジは優れた治療効果を示しました。
ファイザーの血友病治療における最新の動向
ファイザーは、ヒムパブジ以外にも新たな血友病治療法を開発しています。
- 2024年4月:血友病Bの特定の患者を対象とした1回限りの遺伝子治療薬「Beqvez」がFDAの承認を取得。
- 2024年7月:血友病Aの遺伝子治療薬候補「giroctocogene fitelparvovec」の第3相試験が良好な結果を示す。
まとめ
臨床試験で優秀な成績を残したヒムパブジがFDAに承認されたことにより、血友病治療の選択肢が広がり、より多くの患者が負担の少ない治療を受けられる可能性が高まっています。
日本でも同じ成分を持つ医薬品「ヒムペブジ」が2024年12月に承認されているため、日本の血友病患者の治療の質も向上することになります。
この記事の参考サイト
Pfizer’s Hympavzi Approved for Treatment of Certain Types of Hemophilia
Tissue factor pathway inhibitor(TFPI)の基礎