デュピクセント(一般名:デュピルマブ)は、リジェネロン社とサノフィ社が開発した抗炎症薬で、米国食品医薬品局(FDA)よりCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の追加維持療法として承認を取得しました。
本薬はIL-4およびIL-13を標的とすることで炎症を抑制し、呼吸機能の改善や急性増悪のリスク軽減が期待されています。
既に米国、EU、中国で承認を受けており、日本でも2024年4月に適応追加申請が行われ、現在審査が進められています。
デュピクセント、COPD治療薬としてFDAの承認を取得
2024年4月、リジェネロン社とサノフィ社はデュピクセント(デュピルマブ)が慢性閉塞性肺疾患(COPD)の追加維持療法として米国食品医薬品局(FDA)の承認を取得したことを発表しました。
これにより、デュピクセントは、COPD治療において米国初の生物学的治療薬となりました。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)はどんな病気?
COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、主に喫煙や大気汚染などによって引き起こされる進行性の肺疾患です。
ゆっくりと進行する病気のため、初期段階では殆ど自覚症状がありません。
進行すると以下のような症状が現れます。
- 呼吸困難(息切れ)
- 慢性的な咳
- 痰の増加
- 肺機能の低下
進行度合いは以下の4段階に分類されます。
ステージ | 症状の程度 |
---|---|
GOLD 1(軽度) | 軽い咳や痰があるが、日常生活にほぼ支障なし |
GOLD 2(中等度) | 階段の上り下りなどで息切れを感じる |
GOLD 3(重度) | 少しの動作でも息切れし、活動が制限される |
GOLD 4(最重度) | 安静時でも息苦しく、酸素療法が必要になる |
デュピクセントはどんな医薬品か
デュピクセントは、もともと喘息、アトピー性皮膚炎、慢性副鼻腔炎などの治療に使用される抗炎症薬です。
COPD患者に対しても有効であることが確認され、今回の適応拡大承認につながりました。
デュピクセントのCOPD治療における効果
デュピクセントは、従来のCOPD治療薬と異なり、IL-4およびIL-13という炎症性サイトカインを標的とすることで、COPDの炎症を効果的に抑制します。
免疫細胞から分泌されるタンパク質。
細胞間の情報伝達を担っており、炎症や免疫に関連する働きがあります。
臨床試験では、COPDの悪化頻度を減らしたり、肺機能を有意に改善するなど、患者のQOLを向上させる優秀な結果を残しました。
デュピクセントの承認状況
COPD治療薬としてのデュピクセントは、FDA以外の規制当局でも承認が進んでいます。
- 2024年4月:FDA(米国食品医薬品局)がCOPD適応を承認
- 2024年7月:欧州連合(EU)規制当局がCOPD適応を承認
- 2024年10月:中国の規制当局がCOPD適応を承認
これにより、デュピクセントは米国・EU・中国の主要市場でCOPD治療薬としての適応を取得しました。
日本では、2024年4月26日にサノフィ株式会社からCOPD治療薬としての適応追加承認申請が行われましたが、2025年2月現在ではまだ承認は取得されておらず、今後の審査結果が待たれています。
この記事の参考サイト
Regeneron, Sanofi Get FDA OK for Dupixent to Treat COPD
医療用医薬品 : デュピクセント