title メルク社の新薬「ウィンレベア(Winrebair)」が肺動脈高血圧症治療薬として承認
2024年3月に肺動脈高血圧症治療の新薬が承認
2024年3月26日、FDA(米国食品医薬品局)は、米国内での肺動脈性肺高血圧症(PAH)の治療薬として「ソタテルセプト」を承認しました。
ソタテルセプトは、「ウィンレベア(Winrebair)」という商品名で販売されます。
肺動脈性肺高血圧症とは
肺動脈性高血圧症(PAH)は、心臓から肺に血液を送る血管「肺動脈」の流れが悪くなることで肺動脈の血圧が高くなる病気です。
日本では指定難病に指定難病に認定されています。
肺動脈の血圧が高くなると、心臓に負担がかかり、以下のような症状が現れます。
- 動いた時に息切れしやすくなる
- 身体がだるくつかれやすい
- 足のむくみ
- 失神
- 喀血
- 動悸
- 咳
症状が悪化すると、お腹に水が溜まったり、チアノーゼ(全身に酸素が行き渡らず、皮膚や粘膜が青みを帯びる事)を起こす事もあります。
ウィンレベアの作用・働き
ウィンレベアの有効成分「ソタテルセプト」には、血管構成細胞の増殖を促すシグナル伝達経路に関わるアクチビンを捕捉することで、血管構成細胞の増殖を抑制するシグナル伝達経路とのバランスを改善し、血流を改善する働きがあります。
このような働きから、アクチビンシグナル伝達阻害剤に分類されています。
第3相臨床試験では、3週間に1回ソタテルセプトを注射した患者は、6分間で歩行できる距離が大幅に伸び、プラセボを使用した場合と比較して、死亡やPAHの症状が悪化するまでの時間が延びることが確認されました。
テネシー州ナッシュビルにあるアセンションセントトーマスハート病院の心臓専門医であり、メルク社が主導した第3相臨床試験に責任医師として参加したジェシカ・ヒューストン氏は以下のように述べています。
「この薬は、これまでの治療法とは異なり、病気の進行を実際に遅らせる効果があると感じています」
ウィンレベアには副作用も報告されており、一部の患者においては、出血や皮膚に小さな血管が形成されるといった症状が見られています。
ウィンレベア発売の経緯
ウィンレベアは元々アクスレロン・ファーマ社によって開発されていましたが、2021年10月に同社はメルク社によって115億ドルで買収された為、メルク社がウィンレバの開発を引き継ぎました。
ウィンレベアを使った際の治療費
ウィンレベアは、1瓶14,000ドル(日本円で216万円ほど)で販売される予定です。
ウィンレベアは3週間に1回のペースで投与が必要な医薬品のため、標準体型の患者1人あたり、年間で約242,000ドル(日本円で3733万円)に相当します。
ただし、投与量は患者の体重に基づいて調整されるため、実際の費用は個々の患者によって異なります。
日本での治療費についてですが、ソタテルセプトは日本ではまだ研究段階の成分であるため、厚生労働省からの承認が下りておらず、薬価なども決められていないため、未定になります。
この記事の参考サイト
WINREVAIR™(sotatercept)、肺動脈性肺高血圧症(PAH、WHO Group 1)の 成人患者に対するファーストインクラスの治療薬としてFDAの承認を取得
肺動脈性肺高血圧症(指定難病86)
Merck’s $11.5 Billion Bet on Its Next Big Drug Finally Arrives:WSJ