今注目を集める肥満症治療薬「ウゴービ」について、減量効果を超える健康メリットがあるという新たな知見が得られました。
今回の記事ではウゴービによって得られる副次的なメリットについて詳しく解説します。
ウゴービによって心不全の症状を緩和させられることが判明
2024年8月23日、研究者たちの発表によって、ノボノルディスク社の肥満症治療薬「ウゴービ」が、肥満症患者でしばしば認められる心不全の症状を緩和させることが明らかになりました。
今回の研究結果は、New England Journal of Medicineにオンラインで掲載され、アムステルダムで行われた欧州心臓病学会で発表されました。
今回の研究データによって、ウゴービや同成分を持つ医薬品「オゼンピック」、類似の薬剤にも体重を減らす以上のメリットをもたらす可能性について、新たな見解が得られました。
ウゴービは、デンマークの製薬会社ノボノルディスク社が開発した持続性GLP-1受容体作動薬に分類される肥満症治療薬です。
有効成分セマグルチドがGLP-1受容体と結合することで、インスリンを分泌させ、血糖値を下げる働きがあります。
肥満治療以外にもメリットがある薬剤として知られており、 週1回のウゴービの投与を1年間継続した患者において、疲労感や息切れ症状が改善され、より長距離の歩行が可能になったとのことです。
一方、平均13%の減量も認められました。
ノボノルディスク社が開発した糖尿病治療薬で、有効成分はウゴービと同じ「セマグルチド」を含有しています。
オゼンピックはアメリカで2017年に糖尿病治療薬として承認されましたが、血糖値を下げる効果のほかに、体重を減少させる効果が認められ、話題となりました。
オゼンピックは糖尿病治療を目的として処方されますが、体重減少を目的として処方された場合、保険適応できず、薬代は全て自己負担となります。
そのため、ノボノルディスク社はオゼンピックと同成分のものを、「肥満症治療薬ウゴービ」として改めて申請し、2021年に承認を得ています。
ウゴービの臨床試験で心不全の症状改善が確認された
現在、アメリカでは600万を超える人々が心不全を抱えています。
心不全を発症すると、疲労感を感じやすくなったり、息切れしやすくなったりと、毎日のタスクをこなす体力が制限されてしまい、症状が重くなると死亡に至ることも珍しくありません。
糖尿病患者は「駆出率が保たれた心不全」を発症するリスクが非常に高いとされています。
心臓(左心室)の収縮能の体表的な指標である駆出率が保たれている(正常)にも拘わらず、心不全の症状を抱えている状態。
2021年まで治療薬が全くなく、治療が難しいタイプの心不全でした。
医師たちは、体重減少が心疾患を軽減することを観察してきました。
ウゴービの臨床試験では、約530人の心不全患者が参加しました。
試験終了後のアンケート結果によると、ウゴービ投与群はプラセボ群と比較すると、2倍近く心不全症状が改善されたと報告されています。
また、ウゴービ投与群は研究開始当初と比較すると、6分間で21メートル多く歩くことができるようになりました。
これに対し、プラセボ群は1.2メートルしか改善が認められなかったとのことです。
心不全で入院あるいは救急外来を受診した患者は、ウゴービ投与群の中で1名だけだったのに対し、プラセボ群では12名でした。
これらの結果から、「ウゴービは”駆出率が保たれた心不全”を伴う糖尿病患者の治療における固定概念を根本的に変える可能性がある」と今回の研究を指揮したカンザスシティのセントルークス中米心臓研究所の心臓専門医Mikhail Kosiborod氏は語ります。
肥満治療薬によって得られる新しいメリットが注目されている
多くの研究者たちは肥満治療薬によって得られる副次的なメリットについて高く評価しています。
ノボノルディスク社やイーライリリー社は、睡眠時無呼吸症や肝臓病などに対する肥満症治療薬の効果についても日々研究を積み重ねています。
ノルディスク社は、他の研究結果を待って、2024年中にアメリカとヨーロッパの保健当局に研究結果を提出し、ウゴービの心不全に対するメリットを発信する許可を得る予定です。
この記事の参考サイト
左心室の動きが保たれた心不全(HFpEF)
Weight-Loss Drug Wegovy Also Works Against Heart Failure:WSJ