肥満治療の分野では、これまでにオゼンピックやマンジャロといった薬剤が広く注目を集めてきました。
しかし、最近の研究で新たな可能性が浮上しています。
それが、リリー社が開発中の次世代減量薬「レタトルチド」です。
2023年6月に発表された臨床試験のデータによると、レタトルチドは従来の治療薬を超える強力な体重減少効果を示し、多くの肥満患者に新たな希望をもたらす可能性を秘めています。
本記事では、レタトルチドの特徴や既存薬との違い、そして肥満治療の未来について詳しく解説します。
リリー社の新薬「レタトルチド」の登場
2023年6月、リリー社が開発中の次世代減量薬「レタトルチド」は、既存減量薬を超える効果が期待されていることが発表されました。
- レタトルチドはどんな薬?
- 48週間の臨床試験で、体重の最大24%の減少を達成
レタトルチドの働き・薬理
レタトルチドは、GLP-1、GIP、グルカゴンという3つの腸ホルモンの働きを組み合わせた新薬です。
脳の満腹中枢に働きかけ、食事の量を減らしたり、血糖値を安定させる働きがあります。
また、脂肪分解を促進したり、エネルギーを積極的に利用するように働きかける作用もあります。
1つ1つの成分の働きは既存減量薬と同じですが、3つの成分を組み合わせる事で相乗的な効果が期待されています。
腸から分泌されるホルモンです。
主に食事後に分泌され、インスリンの分泌を促進し、血糖値を下げる役割を持ちます。
また、食欲を抑制する効果もあり、肥満治療に使用される薬剤に応用されています。
糖尿病治療薬としても長年使用されています。
主に食事後に腸から分泌されるホルモンで、インスリンの分泌を促進し、血糖値を調整する働きがあります。
また、脂肪組織へのエネルギーの蓄積を防ぐ役割も果たすとされています。
膵臓から分泌されるホルモンで、血糖値を上昇させる働きを持ちます。
主に低血糖状態になった際に体が糖分を供給するために分泌されるものですが、最近の研究ではエネルギー消費を増加させ、体内の脂肪を燃焼する効果があることが示唆されています。
従来の薬剤を超える可能性を示すデータが続々と報告
48週間の臨床試験では、最大24%の体重減少が達成されました。
この成果は、従来の治療法と比較しても極めて高い減量効果を示しており、多くの肥満患者に新たな希望を与えています。
既存現良薬「オゼンピック」「マンジャロ」との比較・違い
これまでの主力減量薬であるオゼンピックやマンジャロも、GLP-1受容体作動薬として作用し、食欲を抑制し体重減少を促す治療薬です。
これらは2型糖尿病の治療薬として開発されましたが、肥満治療にも大きな効果が期待されています。
2型糖尿病の治療に使われる薬の一つで、セマグルチドという成分を含んでいます。
体内でインスリンの分泌を促進し、血糖値をコントロールする働きがあります。
また、GLP-1受容体に作用して食欲を抑えるため、体重減少にも効果があることが知られています。
2型糖尿病の治療に使われる薬で、インスリンの分泌を助けるGLP-1と、糖依存性インスリン分泌ポリペプチド(GIP)という2つのホルモン受容体を活性化する薬です。
これにより、血糖値をコントロールし、体重減少の効果も期待されています。
週1回の注射で投与され、主に腹部や太もも、上腕に自己注射します
リリー社の新薬「レタトルチド」と既存減量薬との違いは以下4点です。
- 効果の強さ
- ホルモンの組み合わせ
- 肝機能への効果
- 長期的な持続効果
効果の強さ
レタトルチドは臨床試験において、最大で体重の24%の減少を達成しました。
これは、オゼンピックが示した約17%、マンジャロの約22.5%と比較しても高い数値です。
ホルモンの組み合わせ
オゼンピックはGLP-1単体を活用し、マンジャロはGLP-1とGIPの2つのホルモンを使用します。
一方、レタトルチドはGLP-1、GIP、グルカゴンの3種類のホルモンを組み合わせることで、それぞれの相乗効果で食欲抑制や脂肪燃焼を強化しています
肝機能への効果
レタトルチドは肥満患者において、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の改善が確認されています。
肝臓内の脂肪減少により、肝機能が向上する可能性があります。
アルコールをほとんど摂取していないにもかかわらず、肝臓に脂肪が蓄積する状態を指します。
主に肥満や糖尿病、メタボリックシンドロームと関連しており、肝臓が正常に機能しなくなる危険があります。
進行すると、より深刻な肝疾患である非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)や肝硬変に進展することがあります。
これは、オゼンピックやマンジャロには限定的な効果しか報告されていない点となっております。
長期的な持続効果
臨床試験では、48週間の投与後も高い効果が確認され、治療を継続することで最大72週間にわたり体重減少効果が持続することが示されており、治療を継続することでさらなる体重減少や健康状態の改善が見込まれています。
既存減量薬「オゼンピック」の効果は最大48週間続くとされている為、新薬を用いる事で、より長い期間、安全に体重を減らす事が可能となっています。
肥満手術に代わる治療法としての期待
従来のバリアトリック手術(肥満手術)は、1~2週間のダウンタイムや合併症リスクが生じる可能性がある等、身体的な負担が多い治療法でした。
主に重度の肥満患者を対象に行われる手術。
胃を縮小したり腸の一部を切除したりして食べ物の吸収量を制限することで、体重を減少させる手法です。
この手術には、胃バイパス手術やスリーブ状胃切除術などいくつかの種類があります。
体重減少の効果は非常に高い一方、手術にはリスクも伴い、術後の栄養管理や食事制限が必要です。
また、糖尿病や高血圧などの合併症が改善するケースも多く報告されています。
薬剤による肥満治療は身体への負担が少ないため、今後は主要な選択肢となる可能性があります。
消化器系の副作用と今後の課題
レタトルチドを使用した一部の患者には、吐き気などの消化器系の副作用が確認されています。
今後の臨床試験では、副作用の軽減と効果の最適化が重要な課題とされています。
臨床試験の進行状況によると、2026年には販売承認を取得する可能性があるとリリー社は発表しています。
この記事の参考サイト
非アルコール性脂肪性肝疾患:肝炎情報センター
肥満症・糖尿病に対する「肥満・糖尿病外科手術」について
The Drugs That Are Gaining on Ozempic:WSJ