2024年7月、英国で肥満症治療薬「ウゴービ」が心臓疾患治療薬として承認されました。肥満や過体重による心血管疾患リスクの軽減が期待されるこの治療法は、医療現場に新たな可能性を提供します。
肥満症治療薬ウゴービが心臓疾患治療薬として承認
2024年7月23日、肥満症治療薬ウゴービ(Wegovy)は、肥満や過体重の人々に深刻な影響を与える心臓疾患のリスクを減少させるとして、英国の医療製品規制庁(MHRA)によって承認されました。
この薬は、心臓疾患やBMI26以上の患者における心臓発作や脳卒中を防ぐための治療法として期待されています。
この承認は、医療現場における新たな選択肢を提供し、患者の健康改善に貢献すると考えられています。
ウゴービの特長と使用方法
ウゴービはデンマークの製薬会社ノボ・ノルディスク社が開発した肥満症治療薬で、GLP-1受容体作動薬です。
この薬は週1回の皮下注射で投与され、セマグルチドという成分を含んでいます。
NHS(英国の公的医療保険サービス)において、BMI26以上の患者に処方されています。
患者の生活習慣改善と併せて使用することで、より効果的な結果が期待されています。
ウゴービの効果
ウゴービの作用は、GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)と呼ばれるホルモンを模倣することで食欲を抑制するものです。
GLP-1は食後に小腸から分泌され、満腹感をもたらします。
また、GLP-1受容体作動薬セマグルチドは元々、糖尿病治療薬オゼンピック(Ozempic)としても承認されていました。
臨床試験結果:心血管イベントのリスク低減
5年間にわたり週1回セマグルチド2.4mgを投与された17,600人を対象とした臨床試験では、主な心血管イベントの発症が20%減少することが確認されました。
この試験では、以下のような点が評価されました。
- 対象者の構成:肥満または過体重で、心血管疾患リスクが高い17600人を対象に実施。
- 試験デザイン:ランダム化比較試験により、セマグルチド投与群とプラセボ群を比較。
- 主要評価項目:心筋梗塞、脳卒中、心血管死などの主要心血管イベント。
- 結果:セマグルチドを使用した群では、主要心血管イベントの発生率が20%減少。
- 安全性評価:試験中に報告された副作用には吐き気、嘔吐、下痢などが含まれたが、全体的な安全性は良好と判断。
この成果は、肥満症治療が心血管疾患の予防にも役立つことを示しており、医療分野における画期的な進展と評価されています。
英国における肥満と心臓疾患の現状
英国の成人の5人に1人が過体重または肥満であり、多くの人が心血管疾患のリスクを抱えています。
このような背景から、ウゴービのような薬剤は、これらの問題に対処するための貴重なツールとなります。
英国心臓財団のBryan Williams教授は、セマグルチドが深刻な心臓疾患リスクを低減し、生活の質を向上させる可能性を指摘しています。
社会全体で肥満症に取り組む必要性が改めて強調されています。
この記事の参考サイト
ウゴービ:Novo Nordisk Pro
Weight-loss drug approved for heart problems in UK