睡眠時無呼吸症候群(OSA)は、呼吸の停止や低呼吸が繰り返される深刻な睡眠障害であり、肥満との関連が強いです。
多くの患者がCPAP療法など従来の治療法に課題を抱えている中、イーライリリー社のゼップバウンド(チルゼパタイド)がFDAの承認を取得し、新たな治療の可能性が広がりました。
本記事では、この新薬の効果やOSA治療への影響について詳しく解説します。
ゼップバウンドが睡眠時無呼吸症候群としてFDAの追加承認を取得
2024年12月20日、イーライリリー社は米国食品医薬品局(FDA)がゼップバウンド(チルゼパタイド)を肥満の成人の中度から重度の閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)の治療薬として追加承認したと発表しました。
この承認により、ゼップバウンドはOSAに対する初の処方薬として新たな治療選択肢となります。
ゼップバウンドとは?
ゼップバウンドは2023年11月に米国で発売され、もともと肥満または体重関連の合併症を伴う肥満成人向けの治療薬として承認されていました。
今回の承認により、睡眠時無呼吸症の症状を改善する効果が確認されたことが公式に認められました。
閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)とは?
OSAは、睡眠中に上気道が完全または部分的に閉塞し、無呼吸または低呼吸が発生する睡眠関連の呼吸障害です。
この疾患は慢性的な睡眠不足や心血管疾患のリスクを高めるため、適切な治療が必要とされます。
◆OSAの主な症状
- 睡眠中のいびきが大きい
- 睡眠中に呼吸が止まる
- 日中の強い眠気や倦怠感
- 朝の頭痛や喉の渇き
- 集中力や記憶力の低下
- 夜間の頻尿
- 気分の変化(イライラや抑うつ傾向)
ゼップバウンドの臨床試験結果
ゼップバウンドの有効性を確認するために、イーライリリー社は大規模な臨床試験を実施しました。
この試験には、閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)を持つ肥満成人 約2,500人が参加しました。
試験期間は1年間で、被験者はゼップバウンドまたはプラセボ(偽薬)を服用し、その効果が評価されました。
研究の主な目的は、体重減少の程度、OSA症状の改善、そして治療の安全性を評価することでした。
その結果、ゼップバウンドを服用した成人には以下の効果が確認されました。
- 平均で最大20%の体重減少を達成しました。
- 睡眠中の1時間あたりの呼吸中断回数が少なくとも25回減少しました。
- 服用者の最大50%が1年後にOSAの症状が消失しました。
OSA治療の新たな可能性
これまでOSAの主な治療法としては、持続的気道陽圧(CPAP)療法や生活習慣の改善が推奨されていました。
しかし、多くの患者がCPAPの使用継続に困難を感じることが課題となっていました。
ゼップバウンドの承認により、体重減少を通じたOSAの根本的な改善が期待されます。
今後、どのような患者に最も効果があるのか、さらなる研究が進められる見込みです。
この記事の参考サイト
Eli Lilly Gets FDA Approval for Zepbound for Certain Sleep Apnea Patients:wsj
閉塞性無呼吸症候群(OSAS):葛西よこやま内科・呼吸器内科クリニック